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2008年6月27日

【八】涙雨の大磯 前編

平塚宿上方見附がある古花水橋交差点から大磯町に入ります。
平塚宿から次の大磯宿までの距離はわずか2.9km。
東海道全体で3番目に短い区間です。
藤沢から平塚までが長かったからここが短くなってしまったのでしょうか。

これより大磯町
平塚宿を出るとすぐに大磯町

国道1号を300m程進むと現在の花水橋があります。
橋の手前、進行方向左手に、JR貨物の相模貨物駅があります。
1971年に平塚駅の貨物取り扱い業務を分離して新設された駅です。
ウェブ上で全国の地図が見られるサイト「Mapion」の駅名・路線名検索で
「相模貨物」と入力したら出ませんでした。

相模貨物駅
相模貨物駅

一応Mapionの名誉のために言っておくと、
施設名・地名検索で「相模貨物駅」と入力すれば見つかります。

右側の橋の袂には「平成の一里塚」なる物があります。
植えられた木は残念ながら木陰を提供できる程大きくありませんが、
旅の気分は盛り上がります。

平成の一里塚
平成の一里塚

橋の上からは、右前方に高麗山(こまやま)が見えます。
平塚の消防団の前からも見えた、広重の平塚の絵に登場する山です。

花水橋から見た高麗山
花水橋から見た高麗山

かつて高句麗からの渡来人がこの周辺に住んでいたことが
高麗山という名前の由来と言われています。
渡来人は後に武蔵国に移住し、高麗郡が設置されました。
現在の埼玉県日高市、飯能市の辺りです。
高麗山には広葉樹の自然林が残り、紅葉の名所としても知られています。

花水橋から国道をさらに700m弱進むと、化粧坂(けわいざか)交差点です。
藤沢宿から歩いて来たこの日はここで一旦終了。
本当は大磯郵便局まで行ったのですが、
間違えて化粧坂交差点から先も国道1号を進んでしまいました。
実際は化粧坂交差点から右に入る化粧坂が旧東海道なので、
後日ここから歩き直しました。

化粧坂交差点
化粧坂交差点

化粧坂
化粧坂。左手前のアジサイが咲いている所の奥に化粧井戸があります。

保土ヶ谷・戸塚近辺の難所と違い、化粧坂は緩やかな坂です。
入って少し行くと左手に化粧井戸があります。
虎御前がこの井戸で水を汲んで化粧をした事に由来すると言います。
何も化粧専用だったわけでもなかろうに強引なネーミングだと思ったら、
ちゃんと理由がありました。
大磯は海辺の街なので、井戸を掘っても出てくるのは大抵塩水で、
鎌倉時代頃は真水の出る井戸がここだけだったのだそうです。
「化粧に使える水が出る唯一の井戸」という意味でした。

化粧井戸
化粧井戸

この井戸の解説板に
「当時の大磯の代表的女性『虎御前』もこの近くに住み‥‥」とあるのですが、
一体どんな「代表」だったのでしょう。
(この謎は後で解けます)

虎御前と言えば日本三大仇討ちの一つ、曾我兄弟の仇討ちの、
曾我兄弟の兄・十郎祐成の恋人です。
建久4年(1193年)5月28日、曾我兄弟は父の仇討ちに成功するも、
兄の十郎はその場で斬り殺され、弟の五郎も捕らえられて後日処刑されます。

旧暦5月28日に降る雨を「虎が雨」と言います。
虎御前の涙雨という意味です。
歌川広重の東海道五十三次でも、
大磯の絵は「虎ヶ雨」と題された雨降りの絵です。
私が化粧坂を歩いた日は旧暦の5月20日。
厳密には「虎が雨」ではありませんが、雨が降っていました。
間違えて国道の方を歩いたのは梅雨入り前、新暦の方の5月だったので、
この時期に歩き直せて良かったと思います。

化粧坂にあった広重の絵
化粧坂に歌川広重の「虎ヶ雨」がありました。

その先すぐの所に一里塚跡があります。
日本橋から16里、62.8kmです。

化粧坂の一里塚跡
化粧坂の一里塚跡

解説板によると高さは約3mで、
上方に向かって右の塚にせんだん、左の塚に榎が植えられていたそうです。

緩やかな化粧坂を上り切った先に東海道本線の線路があります。
以前はこの道が国道でここに踏切があったそうです。
踏切廃止後も歩行者や自転車が通れるように地下道が造られています。

化粧坂の先にある地下道の入口
化粧坂の先にある地下道の入口。左の塀の向こうが東海道本線。

地下道を抜けた先の道は、両側に大きな松の木が何本かありました。
この辺りが大磯宿江戸方見附跡です。

大磯宿江戸方見附跡付近
大磯宿江戸方見附跡付近

化粧坂交差点からの道は、東海道本線の所で車道が切れているため
車の通りが少ないのどかな道です。
今の時期はアジサイがたくさん咲いています。

大磯宿のアジサイ
江戸方見附の先に咲いていたアジサイ

化粧坂交差点から800m、三沢橋東側交差点で国道1号に戻ります。

三沢橋東側交差点
三沢橋東側交差点

国道に合流して300m程進むと、駅入口交差点があります。
この交差点の所に大磯郵便局があります。
今回はここで風景印を押してもらいます。

大磯郵便局
大磯郵便局

大磯郵便局の風景印
大磯郵便局の風景印

大磯郵便局の風景印は
鴨立庵、大磯海岸の海水浴場、高麗山の遠景です。
切手は小田原城の銅門(あかがねもん)です。
小田原はまだ先ですが、小田原城の切手が2種類あるので
1つ手前の大磯でも使いました。

先程の駅入口交差点を右に曲がって上り坂を250m程行くと、
JR東海道本線の大磯駅です。
現在の駅舎は1925年落成。
瓦屋根ですが、入口の軒の上にある縦長の窓が洋風で、
和洋折衷な感じの外観です。

大磯駅
大磯駅

内部は洋風です。
写真は改札前の天井で、画面左の3枚の窓がある所が正面の壁です。

大磯駅改札前の天井
大磯駅改札前の天井

話が長くなったので、ここで一区切りとします。
駅入口交差点まで戻って東海道の続きを歩きましょう。

2008年6月27日 07:47 | カテゴリー:東海道スタンプラリー